浦谷年良     ウラタニ トシヨシ

昭和22731日生れ。46年テレビマンユニオンに人杜。491月「遠くへ行きたい・真木洋子・島の女は眠れない」でデビュー。以来7年間で約100本のテレビ番組を演出。
映画に関しては「日曜スペシャル・菅原文太」「ああ活動大写真」等の作品がある。
ちゃんばらグラフィティー」奥付より

ちゃんばらグラフィティー」所収『チャンバラ映画監督三人三様 マキノ雅裕●楽しんでチャンバラ映画を作った人』より

私がマキノ雅裕を語ろうとすれば、どうしても私と映画との出あいからはじめざるをえない。マキノ雅裕(当時はまだ雅弘という名前であったが)のおかげで、私は映画監督という存在に眼が開いたのだ。

昭和三十三年、当時まだ小学五年生の私は、いつもと同じように満員の映画館の通路にしゃがみこみながら、スクリーンをみあげていた。そのとき、いままで片眼であったはずの主人公が、突然パッと両眼を見開いたのだ。何人もの敵に斬られ、ザンバラ髪になりながら、両手で拝むように刀をさし出す森の石松の開いた両眼。その開いた〈眼〉が、私にスクリーンの彼方にいる〈監督〉という存在を知らしめたのだ。一瞬エェッという驚き、そしてその後の陶酔感-何ということをさせる人がいるんだろう-石松開眼は、私の監督開眼となった。

 その映画「清水港の名物男・遠州森の石松」は中村錦之助主演、監督はマキノ雅弘であった。幸か、不幸か、この日を境に、私は映画を、ただお気に入りのスターをみにいくだけではなく、監督の作品としてみにいくようになってしまった。

ちゃんばらグラフィティー      マキノ雅裕・監修  浦谷年良氏・編著  講談社 1981年4月刊