下町の民俗学  加太こうじ   PHP研究所

1980(昭和55五)年8月31日第一刷発行  装幀 益川進    0095-459500-7159

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目 次

私と田舎/紙芝居/喧嘩/サーカス/メンコ・ベーゴマ/花火/写真/見世物/蓄音器とレコード/芝居/写生/活動写真/チンドン屋/幻燈/立食い/大道芸/看板/流行歌・演歌/運動会/旅/花/虫、鳥、魚/あとがき

あとがき

 東京の下町生れ、下町育ち、徳川幕府開府以来の江戸っ子の子孫というと、なんとなく通人、粋人のようにきこえるが、私は昭和東京の頽廃のなかに育った貧乏人の子という面が強い。-
 その、私をめぐる大正末から昭和初期へかけての環境のうちの、屋根のないところでの環境、すなわち、街路、原っぱ、広場、川原、山道そのほかで、私に比較的大きい影響をあたえたり、私の興味に強くうったえかけたものについて書いた。
 一例をあげれば、私が子どもだった頃には、外光の下でないと写真はうまく撮影できなかった。私は写真がうつるということが不思議でならなかった。そんなことからはじまって、私は太平洋戦争末期には写真に関係して収入を得るようになる。そういう体験と、写真の現代に至る歴史と、それらについての私の考えを、写真という項目ではまとめた。
 この本に収載してある22編のうち、12編は、『原っぱの文化論』という通し題名で、『グラフィケーション』という一種の宣伝誌に、昭和54年1月号から12月号へかけて連載したものである。その12編については若干の加筆訂正などをした。他の10編は、この本のために書きおろした。
 書名はPHP研究所出版部の人たちと相談して『下町の民俗学』としたが、『原っぱの文化論』よりは私らしい書名だと思っている。*
 この本ができるまでには、第一に『グラフィケーション』の編集をしている"ル・マルス"のみなさま方にお世話になった。また、『グラフィケーション』の発行元のゼロックスのご厚意も感じている。
さらにはPHP研究所出版部の宮下研一氏と、関本文恵氏、装釘の労をとられた益川進氏のご尽力も得た。
「みなさん、ありがとうございました」と、末尾ながらお礼を申しあげる次第である。
1980年初秋   加太こうじ