ユンボギの詩(うた)-あの空にこの便りを  著者イー・ユンボギ 訳者 韓丘庸(Han Gu-Yong

1988318日初版発行  海風社  装幀・挿し絵 やすたけまり ISBN4-87616-138-O CO397

ユンボギの詩表紙画像

目 次

序にかえて 寿岳章子

本書を読むにあたって 編集部

Ⅰ あの空にこの便りを 196412

飛行機にのって/笑いのうず/花咲く朝に/クリスマス・イブ/鳩よ!鳩よ!/楽しい日曜日/雪の降る日/最後のお日さま/ありがたいお父さん/スンナを心配して/新しい家にひっこして/夢に見たスンナ/スンナが帰ってきた/びっくりすること/あの空にこの便りを

Ⅱ 青いできごと 19652

新聞のきりぬき/青いできごと/幸福な一日/チ・インスギ姉さん/楽しきわが家/六年生になって/柳英子(ユヨンジャ)先生/ぼくは ばかだ/新しい友だち/りっぱなお父さん/映画がはじまって

Ⅲ 悲しみが新たに 1965年4月

悲しみの始まり/青少年希望の日/新しい悲しみ/ゆううつな朝/泣顔になって/おとなりのおばさん/お姉さんが行く/待つ身はつらい/酒がにくい/お姉さん、帰ってきてください!/お母さんのことを思って/破れた日記帳

Ⅳ コスモスの花咲いて 196510

コスモスの花咲いて/あるお母さん/入学試験/明徳校をあとにして/朴(パク)おじさんのこと/中学生になって/お母さんにあいたくて/七年目にあったお母さん

Ⅴ 夕やけこやけ 1966

夕やけこやけ/お父さんはさみしい人でした/世のお父さん、お母さんがたへ/悲しみよ飛んでいけ!/日記をえらんで

あとがき

本書を読むにあたって

☆この日記は、韓国の大邸(テグ)という街にすんでいる李潤福(イユンポク)くんが、大邪市の明徳(ミョンドク)国民学校(小学校)の五年生の時の1964(昭和39)12月から、慶邱(キョング)中学校に入学した1966(昭和41)年の11月までのものを日本語に訳したものです。
☆ユンボギの家は、ユンボギ(潤福、11歳-五年生)、妹のスンナ(明順、9歳-三年生)、弟のユンシギ(潤植、7歳-一年生)、妹テスニ(泰順、6)、そしてお父さんの五入家族です。
 お父さんは木工の技術をもった食卓などを作る木工職人ですが、神経痛などで苦しんでいます。すでにお母さんは家出し、スンナも行方不明ですが、その経緯については日記の中で語られています。
☆ユンボギの住んでいる大邸市というところは、慶尚北道(キョンサンフクト)の道庁(県庁の所在地)のあるところで、現在人口200万を数える韓国で第三の大都市であり、昔から大邸りんごと漢方薬の産地として有名です。市内は洛東江(ナクトンガン)の支流が流れ、景色の美しい街です。ユンボギはこの街の郊外にあるアメリカ空軍基地の近くに住んでいました。
☆の日記のれ目かれた、1964-66年は、朴正熙(パクチョンヒ)大統領か軍事クーデターを敢行して政権の座につき、軍政から民政に移行するため大統領選挙を行った翌年にあたり、農作物の凶作についで物価の値上がりは著しく、社会情勢は必ずしも安定していませんでした。
☆朴政権が日韓交渉の急進展をはかろうとしたため、韓国各地で学生デモが続発し、65年には戒厳令及び衛戍令(えいじゅれい)を発動して鎮圧しなければなりませんでした。
 また一方、世界はベトナム戦争のさ中であり、アメリカ及び南ベトナム政府の要請にもとづき、「猛虎部隊」とか「小鳩部隊」という名で48千人を越す韓国軍が南ベトナムに派兵されたのもこの時期です。
☆「ユンボギの詩(うた)」は、すでに1965年に日本語で出版されている前編「ユンボギの日記」(あの空にも悲しみが)につづくものですから、地名や読み方などは、わかりやすくするために、できるだけ前編を参考にさせていただきました。
なお、なじみの薄いことばは、※印及びカタカナでルビをつけ、注釈をつけてわかりやすくしました。
編集部

あとがき

この日記が韓国で出版されたのが1968年ですから、もう20年前になります。この本の主人公ユンボギ少年も、34歳の大人になりました。
この本の原文は、470枚くらいで六章に分かれていますが、その中からストーリーに損色のないように320枚くらいで整理しなおしました。なお、多くの読者からの手紙文は割愛させていただきました。
四年前から続編の翻訳出版のお話がありましたが、諸般の事情により、遅々としてすすみませんでした。
そんな意昧で、いつも叱詫激励をくださった海風社の作井満編集長、いつも適切な助言をくださる友人の熊野忠雄氏、それから大橋愛由等氏をはじめ編集部のみなさん方には、ひとかたならぬお世話になりました。ここに慎んでお礼申しあげます。
また、京都児童文学会のやすたけまりさんには、現代風なタッチですばらしいさし絵をかいていただきました。
殊に元京都府立大学教授の寿岳章子先生からはお忙しいところ時間をさいていただき、りっぱな序文をそえていただきました。改めてお礼申しあげます。
1987820